たのしく、うつくしく。好作紹介 #12

~~ちょっといいかも陣形図式~~

そろそろブログも更新せねばと思いまして。
2000年代前半の詰パラを適当にめくって、よさそうな陣形図式をピックアップ。
なお、すべてチェックしたわけではないのでご了承ください。
いつもの「たのしく、うつくしく。」の理念からははずれますが、まあたまには。

では、最初は穴熊崩しを2作、ウォーミングアップとして。



松本誠氏作
詰パラ2003年1月

穴熊といっても、もう丸裸ですね。
2手目香合からまず読むと思いますが、分岐にあるとおり32銀成から34香と据えれば詰みます。
では桂合は……といったところで、44金を原形消去して44桂と据える構想が巧いですね。香合のときに目一杯働いていた金なので、意外性があります。
最後は角合から清涼詰とは、なんとも都合のいいものです。



高木道雄氏作
詰パラ2003年8月

こちらも丸裸ですが……。
3手目31角成が見えますが、11玉、21馬、同玉と進めるのは損。それよりも23香~21香成として角を温存しておきます。
次に23桂と一発捨てて、実はこれが質駒作り。角を取って収束にぴったりつながります。
陣形図式というより、収束からの逆算な気がしてきました……。

では今回のメイン2作。どちらも矢倉崩れ。



谷川浩司氏作
詰パラ2000年7月

さすが谷川プロというだけあって、目を見張る完成度。
初手に歩頭の限定打が入るのはびっくりです。同歩の変化は指将棋の本などに載っていそうな手順。
それにしても、奪った一歩をきちんと消費して、馬捨の収束につながるとは。初手に打った駒を最後に捨てるのは鈴川好み。
短大担当者も「けちの付け様がない。みんな好きなだけ褒めてくれ」の一言で解説を終わらせる絶賛ぶりです。



酒井博久氏作
詰パラ2005年5月

31角ではまったく続かず、14桂~32金が裏をかいた導入。
次に13歩と叩くわけですが、ここを先に13香とすると同玉、25桂、12玉、13歩、11玉で逃れる仕組みです。
続くポイントは17手目。ここで22角成とすると分岐にあるとおり、23角合で逃れ。角を品切れにするために金が先になるように限定されるとは、いや巧い。
最後は例の収束ですが、よくここにつながるものです。

陣形図式、創作はなかなかに難しいもので、詰キストを満足させる出来のものは少ないですね。
しかし捌きの手順には魅力があるものもあり、収束が決まっていれば価値は格段に上がります。むしろ収束さえ決まっていれば陣形図式として合格でしょうね。

さて、ここまで書いてきてふと、自作にどんな陣形図式があったかなと考えてみました。
せっかくの機会なのでいくつか紹介させてください。(こちらが真の狙いという説あり? いやもともと記事を書きだしたときはまったく予定していませんでしたよ!)



鈴川優希作
my cube 2009年10月

文句の出ない手付かずの矢倉囲い。
32龍以下豊富な持駒を活かして追うしかありませんが、5手目51金が陣形図式らしからぬ打歩回避の手です。だれしもが最初は52金から追うところだと思いますので、収束までささっと到達して、32歩を打つ段階になってあっと気付くのが作者としては見ていて楽しい、そんな一作。
自分の作品集にも収録予定でしたが、問題発生。18手目32玉の非限定は仕方がないとして、12手目12玉も非限定なのです。
これだけならギリギリセーフの範囲……と思っていましたが、12玉とした場合に22金以下の余詰発生。いわゆる変同余詰で、一昔前なら13玉の希望限定として許容されていましたが(むしろ12玉を誤解扱いする場合もあったくらい)、現在の僕の基準ではアウトです。

で、修正したわけですが。



15金……なんという不自然な配置。
陣形図式という価値が下がった今、改めて手順を見返してみると、51金以外の主張点が皆無であるとこに気付きました。(5手目63角の紛れは増えました。このときに45角成を防ぐための54歩です)
収束も打歩回避の性質上仕方がないとはいえ、ただのベタベタだし……。
というわけで、作品集に収録しません! この記事で陽の目を見たので満足!



鈴川優希作
初公開

これは素晴らしい作品 笑。
深い紛れを含んだ連続焦点捨から始まり、ド派手な53龍の突進。
収束まで緩むところなく、大駒をすべて捨てきっての詰上りはちょっと陣形図式とは思えない密度の高さです。まあ逆算なので収束が決まるのは当然ですが。
パラに投稿すれば短大首位を争えるのではないでしょうか。
で、なぜ投稿しなかったかと言いますと。

こちら→スマホ詰パラ好作選



55番 烏丸♪氏作

うーん……。これはほぼ同一手順ですね……。
盤面に未整理感がありますが、おそらく陣形図式を最大限に主張したかったということでしょう。
実際、鈴川作は92銀という駒を置いてしまっています。(端攻めを受けた後という解釈はできないこともないが)
いずれにせよ、ここまで類似してしまうと新作としての発表はできませんね。
烏丸♪さん、本作含めて発表は5作だけのようですが、何者でしょう?

だんだん自作紹介のほうが長くなってしまい、記事の目的を逸脱していますが、次で最後。



鈴川優希作
初公開

「収束さえ決まっていれば価値は格段に上がる」と書いたな……。
そう、たったそれだけの作です。
詰パラにはとっても投稿できない代物だったので、ここで公開できてよかったです。

はい、おしまい。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #11

これまた久し振りの好作紹介となりました。
今回は2作紹介します。



石川和彦作
詰パラ2001年10月号
九州G作品展

ストンリバーの日記をよく更新されている九州の重鎮、石川さんの作品。

実戦風の初形から流れるように手が進み、最後はたった4枚の詰上り。
途中、馬鋸でソッポに行きそこに桂成、さらにその成桂をどかしてからもう一枚積み重ね、すぐさま捨てる手順は趣向と技巧を合わせた美しさがあります。
桂を4枚とも24に打ち付け、成り捨てる統一感もいいですね。
個人的にはどこから作ったのかが気になるところです。

さて、桂4枚の作品を見た後は、銀4枚を使う作品を。



浦野真彦作
詰パラ1983年10月号
短期大学

これまた自然、自然すぎる実戦形。
しかし手順は誂えたかのような美しさです。
銀4枚を捨て、16手目の局面。桂が33に跳んで退路を塞いでいるので、あとは3手詰という、とてつもないシンプルさ。
42銀生の好手にも目が離せません。

両作とも、無駄を排除し、変化紛れも最小限に抑えた手順。
初手から最終手まで、計算されたというよりも、なるべくしてなっているという印象の作品でした。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #10

この連載を楽しみにしてくださる方がいるということなので、作品を見つけては更新していきます。
今回は、えび研で話題になった作品。



作者の小林尚樹さんは今月の詰パラに載っている方。最近になってTwitterを始められました。
ご本人のツイートによるとこの作品の発表が16年前で、その前の入選はなんと31年前。「急ぎすぎずのんびりとやりませんか」とのこと。

早速作品の鑑賞に入りましょう。
まずタイトルが付いていて、「1月1日」。そのココロはと言いますと、初形が1/1になっている……からだそうです。発表は1月なので、年賀詰になっているということでしょうね。
ただ、言われないと分からないので曲詰を主張する作品ではないことは明らか。では、手順は?

上部脱出を防ぐには83銀~角打しかありませんが、ここは短打の72角。92玉には94香、93合、81角成を見せているわけです。よって玉方は82に逃げます。
そこで妙手93銀が飛び出します。71玉に83桂の余地を作っているわけですが、やはり焦点に捨てる感覚は良いものです。
同銀で上部が塞がったら手は限られてきて、83香~84桂~94香しかありません。ここで当然ですが移動合で84を開けるのが好手(他合は81角成~72角で簡単)。
いよいよ終幕が見えてきました。83香を成り捨てて84に打ち替え、そして今度は72角を捨てて61に打ち替えるのです。香も角も、いったんは自分で短く打ったのに、それを成り捨てて一間離しに打ち替えているのが巧妙。
終わってみれば、玉方の銀が84と93を二往復。それ以外の駒は元通りで初形に94香と72馬が加わっただけ、という、実に味の良い対比が現れます。

ここまで簡素な形から、易しく、そしてストーリー性のある手順を紡ぎだす作品。なかなかお目にかかれるものではありません。今の大学担当者のお気に入りだという話も聞きました。

えび研で話題になったのはなぜかと言いますと、迷宮の王にお言葉ですがと同じ議論で、1月1日に初手は必要か、ということ。
初手を省くと、72角短打から入って、収束は94香が忽然と現れた形になるので、今度は61角と打つ、その対比が強調されるという意見です。
僕の考えですと、初手の銀捨は入れるべきかな、と。理由はいろいろあって、玉形が安定すること、初手83銀と5手目93銀の違いが見られること、などなど。
また本作の場合、94香を出現させようという狙いのもとに攻方が手段を尽くしているというよりも、易しい流れの中で行き着いたところが94香の出現、という因果関係のほうがふさわしいように感じられます。
結局は好みの問題、と言ってしまえば議論が終わってしまうのですかね。

追記:コメントにて、「1月1日」はタイトルではなく、結果稿の解説で作者コメントとして触れられただけと指摘頂きました。訂正いたします。
タイトルを付けるかどうかも好みの問題ですが、こうして引用される場合に便利だということは明らかでしょうね。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #9

この連載がずいぶん途絶えてしまいましたが、まあひと月に1回くらいのペースでやっていければいいかなと思っています。
たま研に出かける前にさっと更新しておきます。

今日紹介するのは、岡本眞一郎氏の作品。ググってみたところWikipedeiaに記事があってびっくりしました。
岡本氏はあぶり出しと不成で有名ですが、この作品はそのどちらでもありません。



岡本眞一郎
将棋ジャーナル 平成1年12月

シンプルな初形。初手も香を打つしかなく、解図欲が増しますね。これに対し27玉にはと金を引いて1手詰ですから、合駒を考えることになります。
しかし何を合駒しても、26と、同玉、17角の筋が強力。以下27玉、37飛、16玉、36飛、27玉、26飛となってだいたい詰んでしまいます。これを防ぐ合駒は……、そう、36に利かせるための18角合しかありません。なんとなく予想できるとは言っても、角中合の出だしは好印象です。
この場合もやはり17角から飛を使うしかありません。36飛、同角成の瞬間に、香の利きが復活するので、開王手ですね。面白くなってきました。
何も考えずに53角成とやってみます。ちなみにここは可成地点ならどこでもOK、成生も非限定ですが、そこまで気になりません。それはともかく、対して27玉には17馬の1手詰だし、18金合と粘っても同香、同馬、26金迄。万策尽きたか?
いえいえ、ここで再び18馬!と突っ込んで退路を開ける手がありました。中合した角をスイッチバックしながらの移動中合! これがこの作品のテーマ。
以下は36に逃げる手に対して27角がまさにピッタリ。結局は移動中合の角が攻方に渡って最後の決め手になりましたね。

高度な狙いを実現しておきながら、配置も収束も、どうしてこんなにきれいにまとまるのか、というほどの完成度です。まるで最初からそこに作品が存在していたかのよう。このコーナーで紹介するにもってこいの、たのしくうつくしい点まで完璧です。

本作、ジャーナル賞を獲得して、詰パラの「名曲ライブラリー」で紹介されていました。僕はジャーナルを持っていないので、そちらで知ったのです。
ちなみに空気ラボの同一作検索にかけてみると、ジャーナルではヒットせず、出典が名曲ライブラリーのほうで検出されました 笑。
ともかく、この作品は今後ずっと記憶されるべき傑作でしょう。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #8

関東は地震が多いですね。念のため乾パンとか水とかを備えておいたほうがいいのでしょうか。

今日も詰パラのバックナンバーから紹介。



詰将棋パラダイス2004年8月号
臨時大学 山本善章作

初手14龍には金合で逃れとわかれば、ほとんど一本道。角を打ってからの14龍で合駒を訊きますが、生半可な合駒では12歩~23龍で簡単。金では同龍で早い。ここも数秒で飛だとわかります。
となれば12歩から飛を取って、その飛でもう一度開王手。今度は25の歩が取れますね。
そして14龍とすれば、さっきの状態から25歩が消えただけ。なんと、こんなきれいな準実戦形からハガシ趣向が飛び出すのです。
もう一回行えば、今度は桂を手に入れることができるので、収束となります。これもまたきれいなまとめ。大駒は消えないものの、雰囲気を壊すことなく自然に詰み上がります。

おそらく作家の方なら、もっと繰り返したいと考えることでしょう。例えば26と、27桂と配置するなどです。この場合26とを取った後15龍と入ることになりますが、角合で詰みません。
この角を盤上に置いて売り切れにすれば成立し、もっと華麗な収束が付くことも予想されますが、皆さんどちらがいいでしょう?

僕は断然、発表図を選びます。4×6に収まったシンプルな形を壊したくありませんし、なによりここからハガシが出るという驚きがこの作品の価値を高めていると思うからです。
そしてもう一つ。「繰り返し趣向は、繰り返すことに本質的な意味がある場合のみ、繰り返すべきだ」というのが僕の主張だからです。
本作の場合、いったん繰り返しがわかってしまえば、2筋にどんなにと金の柱ができても、読む量や楽しさはさほど変わりません。また、例えば単純な馬ノコで馬が近付いていくだけの趣向も同様です。こういう場合、手数を伸ばすためだけにハガシの駒を増やしたり、馬の位置を遠ざけたりする行為には、少し考える余地があっていいと思うのです。

いっぽう「本質的な意味」とは、次のような場合。
まず、長手数狙いの作。ミクロコスモスで馬が近くにあったら、ここまでの知名度はなかったかもしれません。
そして、持駒変換など。4枚の歩を4枚の桂にするという趣向なら、桂4枚という枠を最大限に使いきっている点で本質的といえます。
さらに、盤の領域の利用。例えばおもちゃ箱のくるくる作品は、盤の端から端までを使うことによって、折り返しや収束を簡単にしているものが多いと思います。繰り返すことによって手順を作っているのです。

他にもたくさん考えることはできるとは思いますが、要は繰り返すことに意味が薄い作品に対して、もっと工夫の余地があると言いたいのです。だって、単純繰り返しって「中だるみ」に他ならないと思いませんか。いったん趣向がわかってしまえば解答者が並べて考えるわけでもなく、詰パラでも棋譜が省略されていたり。その部分を、好形のため、収束の好手順のために回すという作り方もあるわけです。
そして、あえて繰り返し部分を作品として省くことによって、解答者が作品の奥行きを感じることができるのです。馬がもっと遠くにあればノコの回数が増えて○手詰になるな、でも作者がそうしなかったのも頷ける気がするな、とか。どこかで見た記述なのですが、例えば詰パラ表紙で繰り返し手順を1回だけでやって詰む作品を出すことで、解答者にとってはその15手以内の作品が数十手の趣向作に見えるかもしれません。

今回紹介した作では、繰り返しを増やした場合の13角合を解答者が読む可能性だってあるのです。実際、詰パラ結果稿にはそれに触れた短評がありました。作意でも変化でもない手順を解答者に考えさせることができるって、すごいことだと思いませんか。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #7

大学の将棋部にはよく顔を出してます。強い人と指すと実力が上がるというのが分かってきました。(実際、部内で一番弱い)
筋違い角はたまに勝てることがあるので楽しいです。
問題は後手番で、76歩、34歩、75歩とか、あと角交換型四間飛車にされるとすでに負け決定な状態なんですがね。相振を学ばないといけません。
2年前くらいは居飛車一筋だったのですが、今は振飛車しか指せないですねー。

さて今日は好作紹介の7回目。詰パラからです。



詰将棋パラダイス2004年10月号
高等学校
作者:後藤正弘

この作者の方、存じ上げなくてすみません。この作品は入選2回目ですね。手順構成に光るものがあったので紹介させてもらいます。

まず77から脱走されると絶望なので、78銀に狙いをつけて68飛打からスタートします。
56玉で継続に困りますが、65馬くらいしかありません。45玉に対して、54馬とすれば左側の脱走は食い止められます。56玉。
この時点で、さっき打った飛が邪魔駒になっているのがポイント。これがなければそこに桂を打って3手詰なのです。
しかし66飛と消去するのは、馬が利いてくるので逃れ。さてどうしたものか。
解決の鍵は、玉が46にいる時に見いだせます。なんとここから飛2枚を立て続けに消去。58の飛は、もう1枚の本命を消去する過程での邪魔駒になっていたのですね。
あとは予定調和の詰上り。47玉と逃げるとモデルメイトの上に駒がすべて働き気分良いですが、作意は67のようです。

打った駒が邪魔駒になるという構成。よくありがちではありますが、この作品では趣向の味を伴ういい出来となっています。逆算での創作と思いますが、よくアイディアが浮かんだものです。変化紛れも軽めにまとまっているし、余計な序を追加せずストーリー一本勝負となっているのも好印象ですね。

と、この記事を書いている最中に思い当たることが。なぜ初形で54に馬を置かなかった?
この場合、2手目56玉の時点ですでに飛が邪魔駒になります。よって、65馬~54馬の動きは、純粋に飛を消去するためだけの目的になるわけですね。本作の場合、馬の位置を変える意味付けがやや重複しています。
85歩→88香くらいにすれば、駒数も変わりなく実現できそうです(使用駒の統一感はなくなるが)。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #6

先日の詰工房で手に入れた将棋魔法陣。
5000円以上もする高価な本なので、ちょっとためらってしまいましたが、「1冊無料で送られてきたんです」ということだったので頂いてしまいました。感謝します。

mahoujin.jpg

素敵なポストカードが中に挟まっていました。
書評を含め、この中から2作紹介します。片方はとても有名な作品なので、実質1作といったところです。

二上達也というと、棋界に詳しくない僕としては名前しか聞いたことがないんですよね……。ちょっと調べてみたところ、将棋連盟元会長、羽生善治の師匠、四段から八段到達の最短記録などなど、ものすごい方らしいです。
詰将棋に関しても第一人者とされるようですが、なにしろ世代が……。この本を読んで少しは知っておかねばなりませんね。

まず第一部。書名の由来となった魔法陣ですが、なんと不成の全格配置集でした。9×9のマス目に玉位置の作品番号をふっていくと、魔法陣が完成するというものです。洒落た趣向です。
なにせ初版は昔(昭和28年!)の作品集なので、不完全作が山積みだったわけですが、何名もの方が修正に取り掛かり、この版で完全となったわけですね。
作品のほうはというと、そこまで面白いわけではないです。もちろん全作不成が狙いになっているのですが、助長な感じが目立ちました。

全格配置なので81作なわけですが、そこを100作に調整するため番外編がありました。
この中に、僕が知っていた作品が。なぜ知っていたかというと、「詰棋めいと」の第8号に載っていたからです。詰将棋クラスタには有名だと聞きました。
ちなみにこの魔方陣には、作品の発表先が書いてないものがあるんですよね。



いやー美しい。持駒桂4枚から、左右対称を思わせるこの手順。収束も決まって完璧です。まさに「たのしく、うつくしい」作品。
……と言いたいのですが、収束11飛のところ、左から飛を打って12玉に11飛成とする迂回手順のようなものが成立しています。珠に瑕、というレベルならいいですが、僕の個人的感覚では余詰に近いです。
本当にこれさえなければ、と悔やまれます。修正するのも難しそうですよね……。

第二部は、基本的に簡素形・実戦形が集められています。手筋物がメインですが、中には軽い構想作もあり、楽しめる選題になっています。「取らせ短打」の1号局、「浦壁手筋(僕が勝手にこう呼んでますが、伝わりますよね)」のプロトタイプもあって驚きました。

それでは1作紹介。第62番です。



北海道新聞、昭和42年。これ、作者のコメントもなく、解説でも「手順全体の流れを楽しむ作」ってあっさり書かれているのですが、けっこう興味深いと思います。
これはですね……最近流行りの、玉方の持駒規制の構想作を思わせます。
33の中合は、32○、同玉、33香成以下を防ぐために下に利く駒でないといけませんが、金を手に入れれば作意のように収束できるわけです。そこで1度目の中合は飛で粘る。しかしそれを取ってもう一度合駒を訊けば、今度は飛が売り切れなんですよね。
確かに「局面のある部分だけが異なって、それが鍵となる」ような最近の構想作とは違いますが、作者の狙いは充分に伝わってきます。これも構想のひとつの表現だと思いますね。

第三部は、エッセイ集。実はまだ読んでません。というか、作品のほうもまだ隅々まで見たわけではないので、そのうち……。とりあえずこの記事を書いておきたかったのでここらへんにとどめておきます。あとは皆さんが実際に手に入れてから、ということで。

前編を通して思ったことは、やっぱり古風な作品集だということです。上で紹介した作の迂回手順含め、収束余詰がある作品がいくつか。総じて収束が弱めな気がします。
そこで、ひとつの指標として、本編200作のうち、最終手の2手前が捨駒になっているものを数えてみました。もちろん作品の価値がそれで決まるわけではありませんが、自分がそういうところをちょっと意識するため気になったのです。
結果、大駒捨が15作(駒取りは捨駒と見なしていません)。200作中の15作、これをどう思うでしょうか。もちろん中編・長編もあるのですが、現代に比べると、やっぱりかなり少ないですよね。そして小駒捨(歩は除く)は17作。たいへんいい加減な数え方ですが、作品の8割は3手収束以上ということですね。古風と思う理由はここにあるのかも知れません。

二上ファンには必買、一般の詰将棋クラスタは、「持っておいたほうがいい本」という位置付けがよろしいかと思います。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #5

このシリーズは好評なようで嬉しいです。
今日は、随分昔の作品。



「詰棋めいと」って、僕にとっては謎な書籍です。
ちょっと調べたところによると、森田正司(銀杏)氏が1984年から発行されていたようで、氏の逝去により2006年の32号で廃刊となった、ということです。僕が詰将棋を始める前の話なので、知らなくても無理はないのですが……。ちなみに、この雑誌の発表作から看寿賞も出ています。
僕が詰パラのバックナンバーを頂いた際、めいとも数冊送られてきました。転居のためちょっと今は手元にないのですが、そのうち詳しく書く機会があるかも知れません。
めいと第7号の中で、ひときわ目を引いたのが本作。

ダイヤ、です。誰がどう見ても美しい模様。しかし本作はただの初形曲詰にとどまりません。
紛れは皆無です。玉が枠の外にでないように追えば、捕まってしまいます。そしてその手順のなんと芸術的なことか!
初形と手順、2つの要素で「曲詰」を表現した作品ではないでしょうか。(ちなみに曲詰表現の3つめの要素として、あぶり出しが挙げられます)
曲詰で、それ自身に本質的な意味がある、というケースは非常に稀です。どういうことかというと、本作の場合、ダイヤ型という対称形を見せることで、手順自体の対称性(趣向性)が際立っているのです。とりあえず字形を配置してそこから正算で作る、という方法ではできません。初形と手順を同時に思い浮かべないと、こんな芸当は不可能だと思います。(もし実際そうでなかったとしても、解答者や鑑賞者には、初形と手順が同時に映える)
まさに必然の曲詰、と呼びたくなるような作品でした。

作家の方々は、どういうインスピレーションを受けるでしょうか。簡単そうなところでは、立体曲詰5→5の5手詰、というのは、初形、詰上り、手数の3要素での曲詰表現と言えます。本作のように、手順と形の間に一貫した関連性があるという作品にも、ぜひ見てみたいです。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #4

今回は有名な作品だと思われます。まあ作者が大御所ですので……。
中編ですが、ヤン詰を解ける方にはスラスラいけると思います。



シンプルな形。持駒が多いですが、初手16歩は同玉、26飛、同玉、27金、35玉でどうも作意らしくないので、初手37角は順当なところ。
対して合駒ですが、これは作意手順を見ればすぐに分かります。これは打歩詰の問題なので、歩も角もできないとなれば、桂合一択ですね。
7手目の27金に対して同歩生が狙い。その意味は、次に28同歩生として18歩を打歩詰にするためです。連続歩生。これだけでも充分に価値があると思います。
打歩詰をどう打開するか。その答えが、29桂としてむりやり成らせ、28桂、同とと元に戻す手順です。12手目と20手目の局面が対応していることに注目してください。歩がと金になっただけ。これを、飛と玉の上下移動を交えたリズミカルな手順で実現しています。
歩が打ててしまえば簡単。しかしこの後も、歩で逐一叩いてと金を引き寄せるのが面白いです。最後も両王手で締め。

なんといっても美しいことが魅力の作品です。初形から詰上りまで、寸分の隙もない。というより、31手がそのままひとつの作品として、もともと存在していたかのような雰囲気です。手の加えようがありません。(実際は24、34、28をすべてと金にするなどの案もありますが、それは好みの問題であって、31手ひと組の本質には関係ないですね)
まさに「なるべくしてなっている」作品です。傑作などという言葉ではちょっとニュアンスが異なってきます。
こういう作品が、もっと後世に残っていくことを望みます。

たのしく、うつくしく。好作紹介 #3

好作紹介の3回目です。今回は双玉モノを。



初手84角は82玉、93角成、91玉、92馬、同玉、84王、82玉、93飛成、71玉で届きません。82に逃げられないようにすることを考えると、初手は91角に決定でしょう。
ふつうの合駒では75飛の1手詰。そうですね、桂合の逆王手が飛んできます。同角成、同玉。
ここで85飛は71玉、83桂、82玉くらいで詰まないので、もうほとんど一直線ですね。74桂、73玉、62龍、74玉。ちなみに74桂に91玉は83王の1手詰が待っています。
ここでも紛れはありません。65銀、同角成、同龍、73玉までスムーズに進みます。
さてこの局面に注目。初形と比べてみてください。攻方64銀と玉方87角が消えただけです!
これがどういう効果をもたらすかというと、もう一度逆王手を含んだこの手順を繰り返して玉が74に出てきた時、65への角の利きが消えているので、75飛と捨てる手が生じているんですね。同玉、65龍迄。実にきれいに決まりました。最後に大駒捨てをもってくる構成が良いです。
結局、角のミニハガシ、と呼びたくなるような作品でした。

本局で僕が目に止まったのは、双玉の使い方が上手いということ。手順中の桂合は、双玉を使わなくても消極的意味付けを与えれば実現は難しくないように見えます。ここでいう消極的とは、取られた時に攻方にとって都合の悪い駒を与えるという意味です。例えば香合だったら、同角成、同玉、84香以下詰むようにする、とか。
しかし本作は双玉を導入することによって、シンプルに桂合に限定しているわけですね。だって桂合以外は1手詰というのがすぐに見えますから。あえて変化を削ることによって、解答者にそれを読ませる手間を省かせているのです。ふつうは作品のボリュームを増す方向で作るものですが、このように楽しい手順を狙いとしている場合は、次の手をリズムよく読ませることが重要だと思います。
あと紛れも減っていますね。玉に玉をぶつける手はありえませんから。これも解答者にリズムを意識させる点で効果的です。
「易しく、楽しい」とは違って「易しいからこそ楽しい」という、僕の大好きなフレーズが効いてきました。

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my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。東京で学生してます。2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回)。半期賞4回。詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。来夏完成予定です。

第n回裏短編コンクール
2015年11月に開催した企画で、7手詰を募集して17作を出題しました。45名もの方に解答頂き感謝です。順位発表はニコ生で行いました。

第φ回裏短編コンクール
2016年、裏短コン2回目の開催。9手詰が25作も集まりました。現在、順次結果稿を作成中です。

たのしく、うつくしく。
僕が理想とする、「易しいからこそ楽しい」作品を紹介していく連載です。不定期更新。

解付き出題
自作を解付きで出していた企画で、現在#120をもって休止中。在庫整理の意味合いが強いです。

今週の詰将棋・
詰将棋ウィークリー

今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。

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