たのしく、うつくしく。好作紹介 #6

先日の詰工房で手に入れた将棋魔法陣。
5000円以上もする高価な本なので、ちょっとためらってしまいましたが、「1冊無料で送られてきたんです」ということだったので頂いてしまいました。感謝します。

mahoujin.jpg

素敵なポストカードが中に挟まっていました。
書評を含め、この中から2作紹介します。片方はとても有名な作品なので、実質1作といったところです。

二上達也というと、棋界に詳しくない僕としては名前しか聞いたことがないんですよね……。ちょっと調べてみたところ、将棋連盟元会長、羽生善治の師匠、四段から八段到達の最短記録などなど、ものすごい方らしいです。
詰将棋に関しても第一人者とされるようですが、なにしろ世代が……。この本を読んで少しは知っておかねばなりませんね。

まず第一部。書名の由来となった魔法陣ですが、なんと不成の全格配置集でした。9×9のマス目に玉位置の作品番号をふっていくと、魔法陣が完成するというものです。洒落た趣向です。
なにせ初版は昔(昭和28年!)の作品集なので、不完全作が山積みだったわけですが、何名もの方が修正に取り掛かり、この版で完全となったわけですね。
作品のほうはというと、そこまで面白いわけではないです。もちろん全作不成が狙いになっているのですが、助長な感じが目立ちました。

全格配置なので81作なわけですが、そこを100作に調整するため番外編がありました。
この中に、僕が知っていた作品が。なぜ知っていたかというと、「詰棋めいと」の第8号に載っていたからです。詰将棋クラスタには有名だと聞きました。
ちなみにこの魔方陣には、作品の発表先が書いてないものがあるんですよね。



いやー美しい。持駒桂4枚から、左右対称を思わせるこの手順。収束も決まって完璧です。まさに「たのしく、うつくしい」作品。
……と言いたいのですが、収束11飛のところ、左から飛を打って12玉に11飛成とする迂回手順のようなものが成立しています。珠に瑕、というレベルならいいですが、僕の個人的感覚では余詰に近いです。
本当にこれさえなければ、と悔やまれます。修正するのも難しそうですよね……。

第二部は、基本的に簡素形・実戦形が集められています。手筋物がメインですが、中には軽い構想作もあり、楽しめる選題になっています。「取らせ短打」の1号局、「浦壁手筋(僕が勝手にこう呼んでますが、伝わりますよね)」のプロトタイプもあって驚きました。

それでは1作紹介。第62番です。



北海道新聞、昭和42年。これ、作者のコメントもなく、解説でも「手順全体の流れを楽しむ作」ってあっさり書かれているのですが、けっこう興味深いと思います。
これはですね……最近流行りの、玉方の持駒規制の構想作を思わせます。
33の中合は、32○、同玉、33香成以下を防ぐために下に利く駒でないといけませんが、金を手に入れれば作意のように収束できるわけです。そこで1度目の中合は飛で粘る。しかしそれを取ってもう一度合駒を訊けば、今度は飛が売り切れなんですよね。
確かに「局面のある部分だけが異なって、それが鍵となる」ような最近の構想作とは違いますが、作者の狙いは充分に伝わってきます。これも構想のひとつの表現だと思いますね。

第三部は、エッセイ集。実はまだ読んでません。というか、作品のほうもまだ隅々まで見たわけではないので、そのうち……。とりあえずこの記事を書いておきたかったのでここらへんにとどめておきます。あとは皆さんが実際に手に入れてから、ということで。

前編を通して思ったことは、やっぱり古風な作品集だということです。上で紹介した作の迂回手順含め、収束余詰がある作品がいくつか。総じて収束が弱めな気がします。
そこで、ひとつの指標として、本編200作のうち、最終手の2手前が捨駒になっているものを数えてみました。もちろん作品の価値がそれで決まるわけではありませんが、自分がそういうところをちょっと意識するため気になったのです。
結果、大駒捨が15作(駒取りは捨駒と見なしていません)。200作中の15作、これをどう思うでしょうか。もちろん中編・長編もあるのですが、現代に比べると、やっぱりかなり少ないですよね。そして小駒捨(歩は除く)は17作。たいへんいい加減な数え方ですが、作品の8割は3手収束以上ということですね。古風と思う理由はここにあるのかも知れません。

二上ファンには必買、一般の詰将棋クラスタは、「持っておいたほうがいい本」という位置付けがよろしいかと思います。

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No title

「魔法陣」初版は昭和28年発行。62年前の本です。
詰将棋は過去の作品を元にしてどんどん進歩しているのに、その元になった作品を現在のものと単に比較するのは筋違いというもの。
古典を古くさいと指摘するようなものではないでしょうか(もちろん古いですけど)。

No title

もちろん心得ていますし、それを批判しているつもりはまったくありません。
ただいわゆる「古臭い」感覚は、具体的にはどういうところから生じるのかと思って、試しに収束の作り方に注目してみました。

第二部の中には、記事で紹介したように現代的な要素を持つものがありました。3番、19番、22番、30番、42番などなど、今の詰パラで発表されたとしても何の違和感もなく好評でしょう。
しかしこのような作品と、その他多くの古風な作品が同居しているのは、なんだか不思議なんですよね。
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my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、大学進学とともに東京へ。詰工房などの会合に顔を出したり、解答選手権などのイベントを運営したりしてます。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

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たのしく、うつくしく。
難解? 複雑? そんなものとは無縁な「易しいからこそ楽しい」作品を紹介していく連載です。不定期更新。

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今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。
※81puzzler閉鎖につき詰将棋ウィークリーの記事にはリンク切れが多いです。

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