たのしく、うつくしく。好作紹介 #8

関東は地震が多いですね。念のため乾パンとか水とかを備えておいたほうがいいのでしょうか。

今日も詰パラのバックナンバーから紹介。



詰将棋パラダイス2004年8月号
臨時大学 山本善章作

初手14龍には金合で逃れとわかれば、ほとんど一本道。角を打ってからの14龍で合駒を訊きますが、生半可な合駒では12歩~23龍で簡単。金では同龍で早い。ここも数秒で飛だとわかります。
となれば12歩から飛を取って、その飛でもう一度開王手。今度は25の歩が取れますね。
そして14龍とすれば、さっきの状態から25歩が消えただけ。なんと、こんなきれいな準実戦形からハガシ趣向が飛び出すのです。
もう一回行えば、今度は桂を手に入れることができるので、収束となります。これもまたきれいなまとめ。大駒は消えないものの、雰囲気を壊すことなく自然に詰み上がります。

おそらく作家の方なら、もっと繰り返したいと考えることでしょう。例えば26と、27桂と配置するなどです。この場合26とを取った後15龍と入ることになりますが、角合で詰みません。
この角を盤上に置いて売り切れにすれば成立し、もっと華麗な収束が付くことも予想されますが、皆さんどちらがいいでしょう?

僕は断然、発表図を選びます。4×6に収まったシンプルな形を壊したくありませんし、なによりここからハガシが出るという驚きがこの作品の価値を高めていると思うからです。
そしてもう一つ。「繰り返し趣向は、繰り返すことに本質的な意味がある場合のみ、繰り返すべきだ」というのが僕の主張だからです。
本作の場合、いったん繰り返しがわかってしまえば、2筋にどんなにと金の柱ができても、読む量や楽しさはさほど変わりません。また、例えば単純な馬ノコで馬が近付いていくだけの趣向も同様です。こういう場合、手数を伸ばすためだけにハガシの駒を増やしたり、馬の位置を遠ざけたりする行為には、少し考える余地があっていいと思うのです。

いっぽう「本質的な意味」とは、次のような場合。
まず、長手数狙いの作。ミクロコスモスで馬が近くにあったら、ここまでの知名度はなかったかもしれません。
そして、持駒変換など。4枚の歩を4枚の桂にするという趣向なら、桂4枚という枠を最大限に使いきっている点で本質的といえます。
さらに、盤の領域の利用。例えばおもちゃ箱のくるくる作品は、盤の端から端までを使うことによって、折り返しや収束を簡単にしているものが多いと思います。繰り返すことによって手順を作っているのです。

他にもたくさん考えることはできるとは思いますが、要は繰り返すことに意味が薄い作品に対して、もっと工夫の余地があると言いたいのです。だって、単純繰り返しって「中だるみ」に他ならないと思いませんか。いったん趣向がわかってしまえば解答者が並べて考えるわけでもなく、詰パラでも棋譜が省略されていたり。その部分を、好形のため、収束の好手順のために回すという作り方もあるわけです。
そして、あえて繰り返し部分を作品として省くことによって、解答者が作品の奥行きを感じることができるのです。馬がもっと遠くにあればノコの回数が増えて○手詰になるな、でも作者がそうしなかったのも頷ける気がするな、とか。どこかで見た記述なのですが、例えば詰パラ表紙で繰り返し手順を1回だけでやって詰む作品を出すことで、解答者にとってはその15手以内の作品が数十手の趣向作に見えるかもしれません。

今回紹介した作では、繰り返しを増やした場合の13角合を解答者が読む可能性だってあるのです。実際、詰パラ結果稿にはそれに触れた短評がありました。作意でも変化でもない手順を解答者に考えさせることができるって、すごいことだと思いませんか。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

繰返し趣向

同じ手順が2回現れると面白いですよね。
それが3回で意味が全く同じだと、それに何の意味があるのだろうと考えた事は僕もありますね。
どうせ同じ事なのにと。
全く同じ事ならマックスでやるのは、形式美かなと考えています。
初めから趣向ですよと言う作品なら、マックス回数の方が良いかな。
趣向が現れるのに意外性があるなら2回で十分かなと思います。
まあ結局は、どちらが楽しいかなんですけどね。

No title

なるほどー、形式美ですか。
ただマックス回数がはっきりとわからない作品の場合は難しいですが。
でも作家としては回数をなんとかして増やそうとしたい心理は働きますよね。解く側としては、一回ぶん読んだらあとは飛ばしてしまうのに。

No title

ご存知かもしれませんが、繰り返し回数を増やした作品に森敏宏作(近代将棋昭和39年3月号)、また煙詰にした添川公司作「龍泉洞」(詰パラ平成22年5月号)もあります。

森敏宏作
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・v桂 ・ ・v香 ・ ・v桂v玉|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 飛 ・ ・ ・|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ 香 ・ ・ ・|四
| ・ 桂 ・ ・v桂 ・ ・vと ・|五
| ・ ・ ・v角 ・ ・ ・v歩 ・|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・vと ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・vと ・|八
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・vとvと|九
+---------------------------+
持駒:角 香 歩 

添川公司作「龍泉洞」
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| とv歩 ・ ・vとv歩 ・v桂v玉|一
|v歩v桂v杏 ・ 馬 ・ と ・v銀|二
| ・ ・ ・ ・ 歩 香v飛 ・vと|三
|v金 ・v銀vとv銀 ・ 歩 金v歩|四
|v金v全 ・ ・ ・ ・ ・vと ・|五
| ・ ・ 桂 ・ 香 ・ 龍v歩 ・|六
|v金 桂 ・ ・ 角 ・ ・vとvと|七
| ・ 香 ・ ・ ・ ・ ・vと ・|八
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・vとvと|九
+---------------------------+
持駒:なし

No title

ペンネーム笑ってしまいました。嗚咽を逆にして悦夫って 笑。
森作、いい作品だと思います。龍ノコが入る縦のハガシが終わったら、不成が入る横のハガシですね。収束も捌けて完璧です。昭和39年の作品とは思えません。
添川作は、ああこの人の手にかかれば煙詰でなんでもできてしまうんだ、と思います。逆算?正算? いずれにしてもすごいですよね。
長編に関してはまるで知識がないので、ありがたいご紹介でした。
カレンダー(月別)
06 ≪│2017/07│≫ 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
FC2カウンター
About
my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、大学進学とともに東京へ。詰工房などの会合に顔を出したり、解答選手権などのイベントを運営したりしてます。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

第n回裏短編コンクール
2015年11月に開催した企画で、7手詰を募集して17作を出題しました。45名もの方に解答していただき感謝です。順位発表はニコ生で放送するという新しい試み。

第φ回裏短編コンクール
2016年、裏短コン2回目の開催。9手詰25作出題の大盛況でした。結果稿はいずれもブログ右袖のカテゴリーからどうぞ。

たのしく、うつくしく。
難解? 複雑? そんなものとは無縁な「易しいからこそ楽しい」作品を紹介していく連載です。不定期更新。

解付き出題
自作を解付きで出していた企画で、現在#120をもって休止中。在庫整理の意味合いが強いので質より量です。

今週の詰将棋・
詰将棋ウィークリー

今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。
※81puzzler閉鎖につき詰将棋ウィークリーの記事にはリンク切れが多いです。

このブログはリンクフリーです。Sine 2009.6.
メールアドレス
makugaeru●yahoo.co.jp
●を@に替えてください。
全記事数表示
全タイトルを表示
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
詰将棋あるあるbot