摩利支天さん逝去

おもちゃ箱掲示板でミーナさんが投稿された、突然の訃報。

「摩利支天のペンネームで活躍された、橋本浩文さんが亡くなりました。まだ55歳の若さでした。いっしょに詰工房にも行きました。ショックです。ご冥福をお祈りします」

摩利支天さんと初めてコンタクトを取ったのは2010年2月10日。
「初めまして、こんばんは(^0^)/」という、いきなり親しみのあるタイトルでメールが送られてきました。
内容は「何かの際は、お気軽にメール下さい」というだけのもの。

僕は詰パラ初入選が2009年5月なので、それからまだ1年も経っていない頃のことです。中学1年生でした。
摩利支天さんの名前は、全詰連の看寿賞一覧で見たことあるなあ、長編を作ってるんだっけか、という程度。
とりあえず挨拶代わりにメールを返信して、自己紹介しつつ、そして摩利さんからの3度目のメール。
なんと、摩利さんの過去作、創作記録、在庫作、検討中の作、作品集の原稿、などなど、膨大なデータがlzhファイルに圧縮されてメールに添付されてきたのです 笑。

それからメールで摩利さんとのやりとりが始まるわけですが、こちらがメールを出してそれに返信する早さが半端ではありません。1日に3通ほど届くこともありました。
すごい人だ(ある意味ヤバい人だ)と思いつつも、でも詰将棋の腕は前歴が証明していて、そして僕にとってはその時点でほぼ唯一の詰将棋仲間でした。
「鈴川さんは長編の才能がありますよ」などと言われ、挑戦してみた記録がこの記事この記事にも。(過去記事は今見ると文体とか内容とか恥ずかしい!)
コメント欄にいる「こじはる」さんが摩利支天さん。アイドルの追っかけも大好きだったようで、AKB48のメンバー名をそのままペンネームにしていてちょっとどうよと思っていました 笑。
ともかく、そうやって僕の創作技術を高めることに一役も二役も買ってもらったのが摩利支天さんでした。

摩利支天さんとの合作が詰パラに発表されたのは2011年10月



タイトルは「デスペラードII」で摩利さんの命名。
手順自体は、繰り返し趣向の見られる打歩物で、こちらが摩利さんの発想。僕は収束などを手伝いました。原図はやたらと長い収束で狙いがぼけていたため、短く切り詰めようということ。まあでもしかし収束用の配置が目立ちすぎるので、今ならもっと改良していたと思います。13手目から61龍、82玉、71龍という迂回も大キズと見なします。

合作第2弾は、2012年7月に大学院に発表した「魔導研究所」。僕にとっては初の大学院入選でした。



前作とは役割分担がまるきり反転していて、原図はこのブログで「今週の詰将棋」として出題していた図。摩利さんのアイディアによって別物になって、そこを僕がさらに改良と逆算を加えていきました。ただ序の4手ほどは摩利さんがどうしても逆算したいということで、僕は不要かなと思っていたのですが、折れました 笑。
ちなみに命名も僕です。

と、いうように、お互いに計400通以上ものメールをやりとりしていた僕と摩利支天さんですが、魔導研究所の仕上げの部分などで詰将棋観の違いも見えてきたわけです。あと高校受験のために詰将棋を少し休んでいた時期もあって、だんだんメールの数も少なくなっていきます。

2013に入っていると、摩利さんから、詰将棋が作れませんとのメールがよく届くようになりました。
my cubeにある詰将棋を片っ端から改良したり、3手5手の素材はありませんかということもありました。
そして、摩利さんお得意の、簡素形を並べて柿木に解かせるという創作法。これも手伝ってくれませんかという依頼もありましたが、僕には時間と根気とマシンスペックが足りないということをお伝えして柔らかくお断りしていました。
最終的には摩利さんがなんとか完成させて、詰パラで発表されていましたね。「風のマドリガル」「光のカテドラル」などもそうです。
マシンを使って瞬時に解答ができる時代、そしてマシンを使って解答してくる解答者もいる時代なのだから、こちらもマシンを使って思い切り難解にしたい、などと仰っていたのが印象的でした。

しかし、どうやらそういう傾向の原因は別にあるらしく、複数の持病に苦しめられる日々を送っていたようです。
「寝付けません(´;ω;`)」というタイトルのメールもあります。
もともと持病のためお仕事をずっとされていなかったらしく、病床で時間だけは余ってマシンに解かせて創作をしていた……という姿を思い浮かべてしまいます。

僕に届いた最後のメールは2013年10月5日。

毎度、摩利支天です。
いつもお世話になっております。
ついに、入選100回に到達しました。
目標に到達しましたという感じですね。
札幌市は、いよいよ本格的な冬に到達しました。
そちらの方も、くれぐれもお体を大切にしてください。
それでは、失礼致します。

摩利さんが同人入り。にも関わらずメールにはいつもの軽快な文章も、顔文字もなく、たったこれだけでした。
しかし当時の僕は、摩利さんの創作途中の作が次々と送られてくるのに若干辟易していて、添付ファイルがないことに逆に安心してしまい、すぐに返信はしなくてもいいかと思ってしまいました。
結局、返信したのは年が明けてから。年始の挨拶のつもりで、そしてついでに摩利さんの創作途中作を改良したファイルも送ろうとしました。
しかし、メールが送り返されてしまうのです。日を置いて送ってみてもだめでした。
いつの間にか、摩利さんのメールが消えてしまっていたのです。

それ以来、一切の連絡はなく、2年経っての訃報。
悲しみよりも、僕にとってかけがえのない方を失ったような喪失感のほうが先立ってしまいます。
11月号詰パラにも、大学院と彩棋会で入選されているではありませんか。
亡くなったことが未だに信じられません。

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作風が

摩利支天さんの事は生前から、方々で書かれていますよね。
それもハッキリではなく、何かにおわすような書き方で。
それらを読んで摩利支天さんは僕と同じようなところがあると感じていたので、交流してみたかったです。
摩利支天さんのメールアドレスは詰パラ誌上に書いてあった時があり、僕からコンタクトを取るのは可能でした。
氏は僕のメールアドレスは知らなかったのでしょうか?
僕が彼と交流しようと思わなかった理由はただ一つ。
彼の作風が気に入らなかったからです。
僕は変化は造るものだと思っています。
そして気に入った変化だけ残し、気に入らない変化や紛れは切る。
雑でややこしいだけの変化・紛れはない方が良いと言う考え方です。
しかし、氏の作品は変化はあればあるほど良いと考えているように思える作品です。
この変化の造り方が180度違う。
そもそも変化なんか造る気がない、勝手に出来た変化でそれが豊富になるようにしているとしか思えませんでした。
僕が氏と交流したくなかった理由はそれだけです(笑)。
こんなに早く亡くなるならメールしてみるんだったと思うと残念でたまりません。
御冥福をお祈りします。

No title

摩利さん、特に若手の方々には積極的にコンタクトを取っていたようですね。
詰工房の実質の発起人も摩利さんだと聞き、そういう点で横のつながりの架け橋の役割を果たしていたんだなと思います。
詰将棋について語ることが人一倍好きだったので、三輪さんだったら作風が違っても話題はいくらでも湧いてきたと思いますよ。
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my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、進学とともに東京へ。現在、20歳学生。詰工房などの会合へしばしば顔を出します。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

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今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。

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