禁じられた遊び手筋まとめ その2
その1の続きです。
【6】
森長宏明
近代将棋1986年5月
【4】【5】に続き、再び森長氏。
焦点合パターンが続いていましたが、今回は玉位置を動かすことによって禁じられた遊び手筋を使います。
初手18香は17桂合の捨合があり、同香では25玉で17桂が打てず、かと言って36龍、15玉、17香、24玉では持駒が桂桂で手がありません。そこで初手から28桂、17玉と動かして、18に桂合はできないので歩合を強要してから16桂と跳ね出して元に戻せばいいという仕組み。
収束まできっちり決めて、理想的な仕上がりと言えます。
【7】
上田吉一
詰パラ1992年10月
【2】の看寿賞作に引き続き登場の上田氏。今度は易しい構想です。
初手を入れておかないと77桂打合が効いてしまうため、成らせて88に合駒をさせるという魂胆。
43桂~12歩成として99銀を入手した後に、12歩~31桂成と逆モーションで初形に戻ったかのような構成がストーリー性を感じさせます。
構想部分が玉から離れているので、遠隔操作のような印象も受けますね。
【8】
森長宏明
詰パラ1992年12月
またまた森長氏。今度も新しい構造を取り入れてきました。
初手から53金、41玉、49飛では47桂合でうまくいきません。そこで初手にいったん59飛と様子を伺い、仕方なしの桂合をさせてから49飛と寄ることで、合駒位置が48になっています。
従来ならばここで歩合となって収束するのですが、48桂成~47桂で何が何でも桂しか渡さない強情な受けがありました。以下、龍も捨てて、最短のまとめとなります。
なお、22香は12飛成以下の余詰防ぎですが、なぜ歩でないのかは謎です。
【9】
森田銀杏
詰パラ1995年9月(修正図)
森田手筋の創始者登場。禁じられた遊び手筋の上にさらにもう一つ構想を塗り固めた作品となります。
序はちょっと乱暴ですが、8手目の局面が問題。素直に31飛成以下進むと、分岐手順のように16歩合とされ打歩詰に誘導されてしまいます。(ここ16桂合は詰むことに注意)
そこで9手目から53歩成、同玉、64金とこちらに金を使い43の利きを外して打歩詰を回避しておくのがミソ。42玉に対し予定どおり31飛成と追うと……玉方は今度は16桂合! そう、打歩詰回避の64金が仇となって桂打のスペースを潰してしまっているのです。
ここまでこの記事をお読みの方ならもう鍵は見つけているはず。そう、13手目に54桂、同角の2手を入れておけば、19飛に対する合駒位置が18になって桂合ができない、という仕組み。以下、狙いどおり歩が打てて詰み。
「桂合なら詰むが歩合で詰まない」→(攻方の工夫)→「歩合なら詰むが桂合で詰まない」→(攻方の工夫)→「桂合を禁手にして歩合強要」という、構想の流れが実にエレガントと言えます。
【10】
富沢岳史
詰パラ1998年11月
詰パラの検討者による、壮大な構想作。
2手目64玉は55角成以下79飛が回れるので詰んでしまいます。58歩合、同飛、同銀成は55角成以下だし、58歩合、同飛、64玉とよろけてどうだ、79飛が回れないだろうと主張しても、合駒が歩では75歩と打たれてぜんぜんダメ。58桂合が打てればいいのに……。
しかし2手目単純に45に逃げる手がありました。49飛と銀を取られてしまうのですが、46桂合とすると結局は銀を54に捨てるしかなく、同玉、59飛に58桂成!がハイライト。成桂なら8段目に行ってもいいだろうという発想で、同飛、64玉となって、玉方は歩を渡さず79飛を回らせずという目的を達成しました。以下は収束ですが角、桂、飛という合駒が出てきてかなり難解な仕上がりです。
45玉は単に逃げる手と言えばそのとおりなのですが、不利逃避のにおいがします。また攻方は単純に攻めているだけなのに、玉方だけが苦心して桂合をひねり出してくる構成も、今まで見てきた他作品とは一味違う作りですね。
今回はここまで。次回はどのような構想が登場するのか、乞うご期待。
【6】
森長宏明
近代将棋1986年5月
【4】【5】に続き、再び森長氏。
焦点合パターンが続いていましたが、今回は玉位置を動かすことによって禁じられた遊び手筋を使います。
初手18香は17桂合の捨合があり、同香では25玉で17桂が打てず、かと言って36龍、15玉、17香、24玉では持駒が桂桂で手がありません。そこで初手から28桂、17玉と動かして、18に桂合はできないので歩合を強要してから16桂と跳ね出して元に戻せばいいという仕組み。
収束まできっちり決めて、理想的な仕上がりと言えます。
【7】
上田吉一
詰パラ1992年10月
【2】の看寿賞作に引き続き登場の上田氏。今度は易しい構想です。
初手を入れておかないと77桂打合が効いてしまうため、成らせて88に合駒をさせるという魂胆。
43桂~12歩成として99銀を入手した後に、12歩~31桂成と逆モーションで初形に戻ったかのような構成がストーリー性を感じさせます。
構想部分が玉から離れているので、遠隔操作のような印象も受けますね。
【8】
森長宏明
詰パラ1992年12月
またまた森長氏。今度も新しい構造を取り入れてきました。
初手から53金、41玉、49飛では47桂合でうまくいきません。そこで初手にいったん59飛と様子を伺い、仕方なしの桂合をさせてから49飛と寄ることで、合駒位置が48になっています。
従来ならばここで歩合となって収束するのですが、48桂成~47桂で何が何でも桂しか渡さない強情な受けがありました。以下、龍も捨てて、最短のまとめとなります。
なお、22香は12飛成以下の余詰防ぎですが、なぜ歩でないのかは謎です。
【9】
森田銀杏
詰パラ1995年9月(修正図)
森田手筋の創始者登場。禁じられた遊び手筋の上にさらにもう一つ構想を塗り固めた作品となります。
序はちょっと乱暴ですが、8手目の局面が問題。素直に31飛成以下進むと、分岐手順のように16歩合とされ打歩詰に誘導されてしまいます。(ここ16桂合は詰むことに注意)
そこで9手目から53歩成、同玉、64金とこちらに金を使い43の利きを外して打歩詰を回避しておくのがミソ。42玉に対し予定どおり31飛成と追うと……玉方は今度は16桂合! そう、打歩詰回避の64金が仇となって桂打のスペースを潰してしまっているのです。
ここまでこの記事をお読みの方ならもう鍵は見つけているはず。そう、13手目に54桂、同角の2手を入れておけば、19飛に対する合駒位置が18になって桂合ができない、という仕組み。以下、狙いどおり歩が打てて詰み。
「桂合なら詰むが歩合で詰まない」→(攻方の工夫)→「歩合なら詰むが桂合で詰まない」→(攻方の工夫)→「桂合を禁手にして歩合強要」という、構想の流れが実にエレガントと言えます。
【10】
富沢岳史
詰パラ1998年11月
詰パラの検討者による、壮大な構想作。
2手目64玉は55角成以下79飛が回れるので詰んでしまいます。58歩合、同飛、同銀成は55角成以下だし、58歩合、同飛、64玉とよろけてどうだ、79飛が回れないだろうと主張しても、合駒が歩では75歩と打たれてぜんぜんダメ。58桂合が打てればいいのに……。
しかし2手目単純に45に逃げる手がありました。49飛と銀を取られてしまうのですが、46桂合とすると結局は銀を54に捨てるしかなく、同玉、59飛に58桂成!がハイライト。成桂なら8段目に行ってもいいだろうという発想で、同飛、64玉となって、玉方は歩を渡さず79飛を回らせずという目的を達成しました。以下は収束ですが角、桂、飛という合駒が出てきてかなり難解な仕上がりです。
45玉は単に逃げる手と言えばそのとおりなのですが、不利逃避のにおいがします。また攻方は単純に攻めているだけなのに、玉方だけが苦心して桂合をひねり出してくる構成も、今まで見てきた他作品とは一味違う作りですね。
今回はここまで。次回はどのような構想が登場するのか、乞うご期待。