禁じられた遊び手筋まとめ その3

その2の続きです。


【11】
近藤諭
詰パラ2000年5月



この記事のもととなった論考が書かれるきっかけとなった作品。
銀2枚を軽く捌く序を越えて7手目、すぐに33馬では14玉、19龍、16桂合、同龍、同角……で手がありません。
そこで36桂と打って合駒位置を18にすることで、桂合を防いでいるわけですね。以下は簡単な詰み。
合駒の紐駒をあらかじめ移動しておく理屈は、【1】や【7】など最もオーソドックスなタイプなので、それ以外の部分でもうひとつ主張できる点がほしいところ。


【12】
森長宏明
詰物屋2000年9月



またもや森長氏。ご自身のホームページであっさりと発表された作品です。
馬をどかすための45角に対して、同馬では19飛に18桂合ができません。そこで玉方は線上に34桂合といったん近づけてから取ることで、合駒位置を16にしようという狙い。以下は龍も消してひじょうに手慣れた収束。
合駒位置を変えるというおなじみのスタイルですが、これは玉方応用に分類されるでしょう。


【13】
三角淳
詰パラ2000年11月



東大将棋部時代の三角氏の作品。
平凡に55金、75玉、48馬としてみると、57歩合なら切って66歩で簡単なのに、57桂合で駒が足りません。そこで初手28馬と様子を見てみます。37の合駒に55金~79馬と進めれば、飛筋が止まっているので相当に詰みそうです。
37に高い駒を合駒すると同馬以下詰むので、37は角合にして48に利きを作るよりありません。39馬に48桂合……ができないんですね!
そこで玉方は必死の抵抗、48角成のタダ捨てから57桂合という順です。この角桂を使ってなんとも気持ちいい収束が待っていました。
いったん成り捨てて線駒を通すという狙いは【8】と同じですが、桂だけでなく角の移動中合にしてさらにダイナミックになっています。作者自身も【8】を知った上での創作だとコメントしています。


【14】
大崎壮太郎
詰パラ2000年12月



我らがデパート担当の、入選2回目の作品。
17桂合を避けるために72龍と突っ込んで馬筋を変えます。
飾りっ気も何もあったものじゃありませんが、スペシャルミニマムな表現としては満点でしょう。
短コンで45作中24位。


【15】
若島正
第6回解答選手権チャンピオン線(2009年3月)



いよいよ若島正が登場。
28角、66玉、39角とすると、48桂合ができずに詰んでしまう。そこで先に37桂合として角を近づけておこうという仕組みです。こうすると攻方は角を残したまま桂をタダで得ることができるので、55角以下の収束に結びつきます。
作者のブログに、この作品の裏事情が載っていますので、興味のある方はぜひ。→「ルービック・キューブ」を解く(その2)
高木手筋を絡めた構想部分から詰上りまで、まさに一点の無駄も緩みもない傑作だと断言したいです。

ところで高木手筋というのは、まだその定義さえまったく曖昧な状態だと思いますが、僕は最も広義の意味付けで捉えています。すなわち、王手ラインが2つ(以上)あり、後で中合をしたいのに「とある事情」によってできないので、1つめのラインで中合して大駒を近づけておく、というもの。
「とある事情」に「金先金歩」を代入したのが高木秀次作、「禁じられた遊び手筋」を代入したのが若島作、と解釈しておきます。


【16】
宮原航
詰パラ2013年7月



僕と同い年で、かつてはこのブログで詰将棋ウィークリーなる企画を共同運営していた作者。上の若島作をさらにアレンジしてきました。
初手から88馬、合駒、65馬、46玉に79馬で玉方は困ります。前に利く合駒では取って47に打たれるし、例によって68桂合は禁手。ちょっと工夫して77を香合にして79馬を取ってしまおうと目論んでも、そもそも香合の瞬間に同馬、同桂成、57香で詰んでしまいます。
そこで登場、高木手筋。2手目77桂成として、あらかじめ馬を近づけておきましょう。取らずに65馬、46玉、79馬には、68圭!で受けようというのです。
したがって77桂成は取るしかなく、以下2枚目の桂合を動かして、馬まで捨てての詰上りです。
今まで見てきた禁じられた遊び手筋の系譜を考えると、成桂合をしようという発想は過去作のうち【10】にしか見られず、きわめて稀な構想と言えるでしょう。


さて、以上16作を見てきました。
2000年以前の作品は、先行研究により網羅されていることを期待したいですが、2001年以降は僕が思いついた作品を紹介しただけなので、抜け落ちがあると思われます。もっと作品をご存じの方はぜひ情報をお寄せください。


参考
詰パラ2000年9月号、2001年2月号、5月号、8月号、11月号
『「八段目桂合禁止」利用作品の系譜』(その一~その五)阿部健治

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

詰パラ200812原田清実(9手)短コン、はどうですか。

No title

なるほど! この作品を忘れていました。
「その4」を近いうちに書きたいと思います。

No title

柳田明 詰パラ2011.06.C級順位戦(15手)とか?
あとは般若一族のやつとか。

No title

ありがとうございます! どちらも次の記事で紹介します。
カレンダー(月別)
04 ≪│2017/05│≫ 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
FC2カウンター
About
my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、大学進学とともに東京へ。詰工房などの会合に顔を出したり、解答選手権などのイベントを運営したりしてます。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

第n回裏短編コンクール
2015年11月に開催した企画で、7手詰を募集して17作を出題しました。45名もの方に解答していただき感謝です。順位発表はニコ生で放送するという新しい試み。

第φ回裏短編コンクール
2016年、裏短コン2回目の開催。9手詰25作出題の大盛況でした。結果稿はいずれもブログ右袖のカテゴリーからどうぞ。

たのしく、うつくしく。
難解? 複雑? そんなものとは無縁な「易しいからこそ楽しい」作品を紹介していく連載です。不定期更新。

解付き出題
自作を解付きで出していた企画で、現在#120をもって休止中。在庫整理の意味合いが強いので質より量です。

今週の詰将棋・
詰将棋ウィークリー

今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。
※81puzzler閉鎖につき詰将棋ウィークリーの記事にはリンク切れが多いです。

このブログはリンクフリーです。Sine 2009.6.
メールアドレス
makugaeru●yahoo.co.jp
●を@に替えてください。
全記事数表示
全タイトルを表示
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
詰将棋あるあるbot