香最遠打をいじってみた

創作講座風に書いてみます。最後に出題あり。

信太弘
詰パラ2000年1月


盤面1

この作品を題材に、いろいろいじってみましょう。
フラ盤で手順を再生して、誰もが目に留まったであろう39香。もちろん限定打です。
その原理を理解するため、まず極限まで単純化してみます。


盤面2

ここで39香。22玉には32金で3手詰なので、あらかじめ33合、同香生として龍の横利きを遮っておきます。
しかし33歩合はその瞬間32金と滑り込んでこれまた簡単。となれば下に利かせる33金合がこの場合の常套手段です。
32金以下清算しても駒が足りない、どうしよう……となりますが、32ではなく42金!が気づきにくい好手で、手が続きます。61龍~31龍~33龍、そしてここから追いかけっこで玉が上っていきます。36龍まで来たときに、17玉、27金、18玉、38龍!と指せるのが最遠打の理由。よって36龍にはやむなく合駒となり、以下駒余りです。
玉方が2手目38~34のいずれかに中合して香を近づけてから33金合の筋も考えられますが、余分な駒が1枚でも手に入ったら攻方は32金以下の清算で事が足りてしまいます。
最遠打の機構だけでなく、中合処理までこの駒数で実現できるのはなんとも都合がいいものです。
ただ、実は上の図のままでは不詰。というのも2手目33桂合を見落としていました。32金、同玉、33香成、21玉、61龍、31歩合でもう手が出ません。

そこで記事冒頭の信太作。33桂合の変化を左辺に追い出すことで詰むようにしています。33金合以下が駒余り41手なので、手数的にも最短のまとめです。
収束についてしいて言うなら、34手目81玉でも92龍以下同様に詰むので非限定である上に、72龍、91玉、92龍以下の迂回手順も成立することでしょうか……?


盤面3

そこで鈴川案。よりシンプルに、を目指した結果です。
左辺の配置、本来なら74金1枚で済ませることができそうだなあと脳内で考えていましたが、71桂成のところ41龍、72玉、71龍の余詰があっては致し方なし。
要は92龍に84玉と逃がすのをどう防ぐかという問題なのですが、83龍迄で詰ませるために95と75に壁駒が必要。92龍のところで83歩成、94玉、84と、同玉、82龍の余詰を防ぐために95は銀。また途中の73香を限定するため75はと金にしてあります。
信太作より収束を2手削ることに成功した算段です。

ところが、盤面2で触れたように、33金合の変化を割り切るためには信太作の収束手数が最短だったはず。
どこでそのバランスを解消して手数を削ったのか……その答えが12歩・13香です。
分岐を見ていただければわかりますが、13を塞ぐことによって33金合を21手で割り切っているんですね。

……そこで疑問。なぜ自然な12香・13歩配置ではなく12歩・13香なのか。
これも分岐を詳しく見るとわかるのですが、36龍、17玉まで追ったときに37龍という手があります。これに18玉と逃げると28金、19玉、17龍という手があり、これを取るための配置なのです。
この手順、何が困るかと言えば、これが成立してしまうと最遠打の39香ではなく38香でも詰んでしまうこと! もはや38龍の余地など関係ないわけです。
よく見ると図1、図2ともに12香にして17に利かせていますね。さりげないですが、これも最遠打のための重要なキーだったのです。

……で、それを逆用してみようと考えるのが詰将棋作家なわけで。


盤面4

嫌味のない序盤を過ぎると今度は39香ができないので38香が限定打。37龍まで追ったところで18玉が詰んでしまうので合駒、以下追い戻してちょっとおしゃれな金捨てが入って幕となります。
39に駒を利かせることで38香に限定するのはちょっと安易な気もしますが、他に思いつかないです……。なので、少なくとも不自然にその駒が配置されるのは避けようと、序盤でなんとか37桂から跳ばせる逆算を入れました。
なお、最遠打の原理が「余分な駒が1枚でも入れば詰み→中合不可」だったので、この37桂をさらに不成で跳ばせてくる逆算も理屈上は入りますね。37圭状態では49飛による王手に対してその余分な1枚が稼げますので。
そこまですると形などにしわ寄せがきそうだったので、やめておきました。
それよりも、34手目、36手目あたりで玉の逃げ方が非限定なのが気になります。この手数なら許容してもいいか……とは思うのですが。

さて。
ここまでいろいろ書いてきましたが、すべては次の作をお見せしたいがための前フリでした……!
当然、香の最遠打をメインテーマに据えた作で、一連の流れを踏まえた上で解いていただきたいと思います。(すでに手の内を明かしているので解きやすいはず)

47-3.png

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ソフト使用でも構いませんので、ぜひコメント残していってもらいたいです!

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No title

88龍まで47手詰ですかね。
頑張って暗算で解きました。
最初は、23手目43龍、51玉、53龍、52香、43桂以下、64の金を取る筋だと思いました。しかし、それでは3筋の香打が限定打でなさそうだったので考え直してみると、53龍には41玉で不詰でした。
2回の香最遠打がリンクしているのがいいですね。
新構想でしょうか。

No title

38と39の非限定打と思わせて、実は39限定だったというストーリーですか。しかし、39香の意味付けがダブっているとも見れるのが良し悪しですね。

最遠打2発なら左右でまったく同じ論理の39香、79香とかどうでしょう。龍の運びが難しいかな。

解答送付致します

44桂、同角、53香、同角、同歩成、同玉、42角、52玉、63桂成、同銀、53飛、42玉、43銀成、41玉、31香成、同玉、39香、33桂合、32成銀、同玉、33飛成、41玉、32龍、51玉、43桂、61玉、71と、同玉、82香成、同玉、89香、92玉、93龍、同玉、83金、94玉、84金、95玉、85金、96玉、86金、97玉、87金、98玉、38龍、89玉、88龍まで47手

難解。序の11手を読み切るのにかなり時間がかかりました。38と39の差別化を8筋の遠香と絡めて実現されていて、かなり構想の難易度が高いと思います。左辺の遠香は、少ない駒数で実現できる良い素材です。

No title

原図との繋がりや一連の作図経緯から外れ今回の趣旨に沿わないことで失礼します。
結果図単独で考えると、39香の目的は(98玉に対する)38龍可能の一点(全ての変化は34でも詰み)、が好みです。

ツイン遠打

この序は嫌味に感じますね。
いきなり柿木解図でしたので。
それは好き好きとして、問題は39香の遠打理由が左の遠打理由と共用している事ですね。
共用は悪い事じゃないのですが、これでは元の図の良いところをぶっ飛ばしているので改作とは言えません。
新作になってしまってます(笑)。
元の図を生かすなら遠打理由を変えてはいけません。
で、4筋に詰方歩を置くと39香、33歩、32金、同玉、33香成、41玉、43龍、51玉で左側に同じ形が出来てツイン遠打が出来そう。
73金合でまとめるには92歩、69とになるとして、いかにその形にするか。
その形にはなるけど、ネックとして持駒の歩が消化出来ない。
……ここまでは鈴川君も同じ事を考えたと思います。
鈴川君は1日考えたけど出来ないとTwitterで言ってましたね。
僕は鈴川君とは違いますよ。
1週間考えだけど出来ませんでした(笑)。

左右遠打

左側も同じ形の遠打にしたいのですが、4筋に歩を置いて33歩合(実際には歩中合、金合になるが)で可能かと思ったが持歩が消化出来ないので諦めました。
そこで左側は別の遠打を考えました。

持駒 香
玉方 12香、31玉、54歩、71香、93銀、96と、99飛
詰方 43金、63龍、79金、84と、85歩以上。

左側も下に駒は置きたくないけど、それが出来たら新作に使うので、置くけど少ない駒数にと考えました。
鈴川図は置かない事にこだわった図ですが、方法が下らない。
この方法ならシンプル化したいです。
僕の案で一応最下段にする事は出来そうですが、配置がごちゃごちゃしそうなので止めました。
投稿作じゃないんでこんなもんでしょう。

No title

解答ありがとうございました!
結果稿でいろいろ書いてありますので、ぜひご覧ください。
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管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、進学とともに東京へ。現在、20歳学生。詰工房などの会合へしばしば顔を出します。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

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2015年11月に開催した企画で、7手詰を募集して17作を出題しました。45名もの方に解答していただき感謝です。順位発表はニコ生で放送するという新しい試み。

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今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。

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