第10回たま研参加記 後編

民間の作品を家元が取り入れた具体例を見ていきましょう。
フラ盤の左下から選択して2作を比較できます。

不利先打


銀鋸


馬鋸


長手数


遠打


裸玉


煙詰


引き違い


四桂追戻詰



「同一の趣向」をめぐる考察
・模倣や剽窃という性格のものではない。
・アイディアは同一でも、完成度からすると「無双」「図巧」の側に軍配が上がる。
・偶然の一致という見方も可能であるが、詰将棋創作の最前線にいる将棋家が、民間作品を知らないというのも不自然。
・民間作品へのオマージュであるとともに、同じ土俵で創作したときの力量の違いを見せつけた「横綱相撲」?

これにて講義内容はおおよそ網羅できました。

僕としては古図式の知識がまったく貧弱で、伊野辺看斎などといった作者名にはほとんど馴染みがなかったものでしたが、(広い意味での)趣向の系譜を理解する上では非常に重要。
また、現代構想作家筆頭の方々が古図式の研究に打ち込んでいるということも踏まえて、詰将棋の体系的な理解に役立つものであることは間違いなさそうです。
詰将棋博物館のサイトで今や簡単に参照することができるので、時間のあるときには並べてみるのも一興でしょう。

今回の講義では時代の流れを幹として詰将棋の発展を見ることができました。たいへんな収穫といえると思います。
また講義最後の、マーケティング論と関連した将棋界の今後を見据える話も、コンピューターの台頭というまさに迫り来る事態にいかに向き合っていくかという指針が示され、特に我々の世代にとっては非常に興味深い内容でした。

ところで、以前スマホ詰パラについてTwitterで云々あったときのことを思い出し、講義を踏まえてこんな関係を考えてみたのですがどうでしょう。
日本将棋連盟=プロ集団ではあるが、それを活動の主体とするのではなく、むしろ意欲あるアマチュアに対するエンパワーメント策こそが将棋界の発展を推進するという論でしたが、ここで、
日本将棋連盟→詰パラおよび中心的詰キスト
アマチュア→スマホ詰パラおよび指将棋派
という置換を試みてみます。
とすると、詰パラ本誌に投稿するような作家は、スマホ詰パラの作品に必要以上に口出ししたり、ましてや敵とみなしたりするのではなく、そういった「詰将棋アマチュア層」に対するバックアップをなすべきである、という図式が見えてきます。
なんとも小さな世界での話ではありますが。
詰キストはなかなかに、「詰将棋アマチュア層」の作品に対してあれこれと口出ししがちかという印象がありますが、最近は僕はそのあたりに対してできるだけ静観するようにしています。
もちろん、大学の将棋部員に作品を見せてもらった、などという場合はいくらか改作のポイントを挙げる、ということもありますが。
詰将棋人口を増やしたいという理念の下に立つならば、我々がやるべきことは玉石混交の中に偶然によいものを見出したとき、内部に紹介する、または作者に詰将棋を勧めてみる、ということなのかもしれません。
スマホ詰パラを批判するのはお門違いというか、外部からそっと見守っておくのがよい関係なのかもしれませんね。
たまにいい作品が発表されていると本誌に出せよとなりますが 笑。

さて、たま研の続きを少し。
山川さんの講義の後は15分ほど休憩。第二部は角さんによる課題作紹介と、利波さんによる「作品を並べるだけ」コーナー。
たま研の講義は敷居が高い(大小詰物や豆腐煙プログラミングなどの回は特に難しかったとのこと、聴きたかった)という声を受けて、作品を紹介するだけならわかるだろうという発想で前回から二部構成になりました。
今回は、たま研第10回にちなんで古図式10番集。
古図式の中から第10番だけを抽出して50題集めたという、利波さんの苦労が忍ばれます。
薀蓄をはさみつつ順番にスタート。

なお、上の「遠打」の項で紹介されている無双ですが、これも第10番。取り上げられた際に、桂合位置の非限定について言及されました。
古図式をちゃんと並べていくと、意外なところでこういう側面が見えてきますね。

50題のうち最初に紹介された、初代宗桂の「造物」10番。

tsukurimono10.png

22飛、同角、53金、31玉、42金打迄の5手詰。
ところで2手目32香合は43金、同玉、53金迄で、妙手説に立つなら3手目も捨駒になるこちらが作意かもしれないところ。
ただし32飛合とすると、43金、51玉、52金打以下変長ですね。
……というのが今までの見解。各所でこのような解説が掲載されていたようですが。
実は32香合でも43金、41玉、32飛成、51玉、52龍迄の変長でした。
つまり「飛合されると変長」という解説は間違い。
なぜこのような勘違いが起きたかというと、初形で玉方33角が31銀である図も伝わっていて、なるほどこれなら飛合で変長です。
そこらへんがごちゃごちゃになってしまい、最初に解説した人が間違い、さらにその解説を引用したものが次々伝わってしまった、というのが利波さんの推測です。
教訓を言うならば、「古図式の解説の孫引きはやめましょう」とのことで。「ちゃんと自分の頭で考えてから引用しましょう」。

10番集、作意がまったく不明でぼろぼろに余詰んでいるものなど、利波さん自身も「目が腐ります」と言うくらいなので、さすがにそこらへんは省いてもいいように感じましたが、古図式研究の観点からはそれらも重要なのでしょうね。
中には「十」のあぶり出しもあり、めでたしめでたし。

懇親会はいつものお店で。山川さんといくらかお話しできました。
二次会以降は、若島さんも合流されましたが、ちょっと疲れてしまったので今回は遠慮しました。(前日まで自転車旅行していたので)

たま研は、30名以上もの詰キストが集まる、全国大会・解答選手権に続く詰将棋一大イベントです。
ぜひ皆さんご参加ください。

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my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、大学進学とともに東京へ。詰工房などの会合に顔を出したり、解答選手権などのイベントを運営したりしてます。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

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2015年11月に開催した企画で、7手詰を募集して17作を出題しました。45名もの方に解答していただき感謝です。順位発表はニコ生で放送するという新しい試み。

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今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。
※81puzzler閉鎖につき詰将棋ウィークリーの記事にはリンク切れが多いです。

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