構想作家の思考回路

ブログを2週間も放置してしまったので、小ネタを一つ出してお茶を濁しておきます。



自作です。投稿はしていません。
ご覧のとおり、玉方銀の往復が狙いですね。
一応解説しておきますと、65銀消去のための「取らず手筋」が序の4手。意味付けは67封鎖です。
次は44銀を打つための香消去に移りますが、65馬~43馬と往復すればよさそう。43への龍の利きを外すために35角と捨てる手が入りますね。
ただし65馬のためには玉方銀の利きをそらしておく必要があり67桂。さらに香消去の後55玉44銀となったときに56を封鎖するため、44玉型で56桂を打って銀を戻しておきます。
そして最後は、35に龍を移動させたがために44銀を取られてしまい、しかし結果的に44の封鎖に成功。65の利きをもう一度外す67桂となります。
なお、9手目56桂と35角の手順前後をすると、33玉から抜け出されますね。

狙いは明快ですが、ちょっと配置がよくないことと、もう1回くらい銀を動かさないとなあということでお蔵入りしていました。
どうにかならないですかね?と会合でとある若手看寿賞作家に見せたところ。

「35角って必要なんですか?」

と。
さて、この発言の意味をくみとって、それに答えを用意してみてください。

僕は曲がりなりにも作者ですから、すぐに意図するところを理解したわけですが。

もちろん途中で35角、同龍としなければ詰みません。そりゃあ必要でしょうよ、と言いたくなりますが、もちろんそういう意味ではありません。
全体の構成として、35角、同龍の2手を省いた詰将棋にならないか、ということなのです。
狙いは銀の往復ですから、大駒捨てとはいえ余分な手は省きたいというのが構想作家の言い分です。つまり65馬、44玉、56桂、同銀生、43馬、55玉としたほうがストレートな表現になりそうですよね。
さっと見ただけでそれに思考がいくのはさすがだなと思いました。

で、僕はそれを半分ほど予期していて、即答したわけですが、さてこの2手を省けない理由はなんでしょう。
もちろん最後の44銀を捨駒にするため、ではありませんよ。それなら最初から44に玉方駒を利かせておけばいいわけで。

……答えは、「57の利きを消すため」です。
4手目、56同玉としたときに65馬で詰ませるため、57は塞いでおかねばなりません。
いっぽうで作意を追ってみます。銀消去から65馬、44玉で43への龍の利きはないと仮定して43馬、55玉と進んだ場合。44銀、56玉、65馬。ここで57が塞がっていたらこれで詰んでしまうのです。手順中44銀を同◯と取っても65馬で詰みですね。
元の図面では、35角、同龍の2手を挟む必要があるため、57の利きがなくなっています。それがゆえに44玉のときに56桂、同銀生として56を塞いでから、最後にもう1回67桂、同銀成と戻す手順が成立しているわけなんですね。

19-40t.png
(65馬、44玉の局面)

35角、同龍の2手は、龍をそらすという攻方のメインの目的をもたせながら、玉方にとってもプラスになるように調整された手なのです。

もともと僕もこの2手はない方針で作っていましたが、銀の往復を加えるためには57の利きを消さなければならないことに思い至り、想定していた作意手順に追加したものです。
こういう創作技術を、僕は広く「挿入」と呼んでいます。

というわけで、詰将棋作家がどういう視点をもって手順を構成しているのか、という例を説明してみました。
ふんふん、と思っていただければ。
この作品も行き場を見失っていたところを、こういう形で世に出せてよかったです。
なお、こうすればもっと往復回数増やせるじゃん、などの意見がありましたらご遠慮なく。

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挿入技法

僕は挿入技法は推奨してます。
テーマには関係なくともそれで置き駒が減るなら入れます。
本図の場合は36歩が余分にいる事になりますから、推敲が必要です。

銀はこれ以上動かすには桂がないので無理でしょう。
合駒を出してなら可能でしょうが、それだと別物になってしまいます。
動かすだけなら47銀の形で67金を捨てるのは可能です。
が、56→67の行ったり来たりじゃなくなるのでどうかです。
一応、挿入手なし、銀移動1回加の図はツイートしておきました。

構想作を得意とする作家

題名を見ての第一感は、「大原美術館の話?」
 ちょっと期待してしまいました。

No title

>三輪さん
Twitterの図はいい構成ですね。馬を離すのは思いつきませんでした。
さすがです。

>谷川さん
なんで大原美術館が出てくるのかわかりませんが、期待外れでどうも申し訳ありませんでしたね。
なお大原美術館には行っていません。

作品として完成を

馬を離したのは初手を入れるためと、余詰防止駒が増えるためです。
馬が近いと玉の後と右後の両方守る必要がありますからね。
初手はあった方が良いかは微妙です。
手順の意味としては邪魔駒消去の方が面白いと思います。
挿入手法の方は他の方法はあると思います。
是非、作品として完成させて欲しいと思ってます。

失礼しました

出典は、詰パラ9月号・小学校選題稿です。

No title

>三輪さん
第2作品集に収録するまでには…… 笑。

>谷川さん
それは知っていますが、どうもつながらなかったもので。
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my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

管理者:鈴川優希
月刊誌「詰将棋パラダイス」を活動拠点とする詰将棋作家。石川県のド田舎育ちですが、大学進学とともに東京へ。詰工房などの会合に顔を出したり、解答選手権などのイベントを運営したりしてます。詰将棋は小学生の時から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回達成)。半期賞受賞6回。2016年4月より詰パラ連載「ちえのわ雑文集」の世話役に就任。現在、第一作品集を執筆中。出版は今夏を予定していましたが果たして……。

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今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答して頂いた方に感謝します。
※81puzzler閉鎖につき詰将棋ウィークリーの記事にはリンク切れが多いです。

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